労働条件の不利益変更 退職金は特に注意
業績不振は会社合併で、労働条件を労働者に不利益な方向へ変更(不利益変更)しなくてはならない場面もあります。ただし、不利益変更は簡単に行うことができません。

労働条件は就業規則に記載されている場合が多いです。労働契約法第9条では、就業規則を不利益変更する場合は、労働者と合意することなくできないと書かれています。例外として、同法第10条に、労働者の受ける不利益の程度や労働条件の変更の必要性などの事情と照らして、変更が「合理的」であればよいとされています。
ただ、法律の原則は労働者との合意が必要となります。

不利益変更を行う時には、全ての労働者に合意書を書いてもらうのが一般的です。ただし、合意書という書面があれば不利益変更が有効かと言うとそうとも限りません。

山梨県民信用組合事件(最2小判平28.2.19)は、会社合併による退職金の不利益変更をめぐる事件です。
合併の際、労働者は合意書に署名していたのですが、合意書を取る前に、起こり得る不利益を十分に説明せず、労働者が自由な意思に基づく合意ではないと認定され、一審、二審の「不利益変更は有効」という判断を覆しました。

「基本給を2割カットする」 というような不利益変更であれば、その不利益は明確でしかもすぐにわかります。しかし、退職金の場合は制度も複雑になり、その後の勤続年数によっても不利益の度合いが異なります(合意する時点では何年勤続するかわかりません)。したがって、退職金の不利益変更をする際には、想定される不利益を十分に説明し、労働者の自由な意思のもとに合意を取ることが大切です。

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