未払い賃金の時効は3年?5年?
厚生労働省は、労働者が企業に未払い賃金を請求できる期間を、現在の2年から3年に延長する検討に入りました。

○民法改正が契機に
厚生労働省が検討を始めたのは、民法の改正で消滅時効の期間が変更になるのが理由です。
労働者が働けば、賃金を受け取る権利があります。賃金は、労働者から見れば債権です。
債権には、消滅時効という考え方があり、簡単に言うと、「もらえなくなってしまう」ことですが、民法ではこの期間を原則10年と定めています。ただし、債券の種類によって、10年より短い期間が定められていて、労働者の賃金は2年と定めています。
このように、原則10年と言っておきながら、5年、3年、2年というように時効の期限をたくさん設定していることはわかりにくいので、期限を原則5年にするというのが、民法の改正内容です。労働者の賃金の消滅時効も、2年から5年へ変更になります。

○なぜ3年?
民法の規定が消滅時効5年になるのに、厚生労働省はなぜ3年としているのか。新聞報道によると「企業の負担が過大にならないように」となっています。2年から5年に延長されれば、期間は2倍以上。未払い賃金として支払いを要求される額も今までの2倍以上になることも考えられます。急激な負担増を避けるのが目的でしょう。
労働基準監督署の立ち入り調査などで、未払い賃金が指摘された場合、今までは最長2年でしたが、法律が改正されれば、最長3年になることでしょう。

○ほんとうに3年?
民法の消滅時効が5年になったのに、労働者の賃金の消滅時効は3年だから、過去3年間分しか払わなくていいのか?そうとは限りません。
仮に労働基準法で、賃金の消滅時効は3年と書かれていても、それは、強行法規である労働基準法の中での話。裁判で未払い賃金が争われれば、過去5年まで遡るという判決が出るかもしれません。

○年次有給休暇にも波及?
時効といえば、年次有給休暇も気になります。現在は、付与してから2年たっても取得しない場合は、その権利がなくなります。消滅時効2年の考え方です。賃金の時効と同じように、年次有給休暇も3年間は取得できると労働基準法が改正されるかもしれません。そして、これも民法の消滅時効5年との関係でどうなるのかわかりません。

民法の改正は、2020年4月1日からとなっています。

社会保険労務士の顧問をお探しの企業は、東京都文京区の平倉社会保険労務士事務所まで