コロナワクチン接種は強制か?
新型コロナウイルスのワクチン接種が加速しています。65歳以上の高齢者に加え、企業で実施する職域接種も始まろうとしています。

企業が接種を実施する場合、従業員に強制できるのでしょうか?

〇ワクチン接種は自己判断
政府の指針や規則を見ると、「国民が自らの意思で接種の判断を行う事ができるように取り組むこと。」という趣旨が書かれていいます。接種するかは自己判断が原則です。行政ができるのは、接種勧奨(あるいは推奨)までです。

〇接種不適当者、接種要注意者

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る臨時の予防接種実施要領」では、予防接種不適当者と要注意者を以下のように定めています。

・予防接種不適当者

ア  新型コロナウイルス感染症に係る他の予防接種を受けたことのある者で本予防接種を行う必要がないと認められるもの

イ  明らかな発熱を呈している者

ウ  重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者

エ 本予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあること

が明らかな者

オ 上記に該当するもののほか、予防接種を行う事が不適当な状態にある者

・予防接種要注意者

ア 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者

イ 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者

ウ 過去にけいれんの既往のある者

エ 過去に免疫不全の診断がされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者

オ 接種しようとする接種液の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者

カ バイアルのゴム栓に乾燥天然ゴム(ラテックス)が含まれている製剤を使用する際の、ラテックス過敏症のある者

接種不適当者は、原則当日の接種はしません。また、要注意者についても、接種するかどうかを慎重に判断することになっています。

なお、

「本予防接種の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。」

となっています。

〇ワクチン接種の強制はダメ

企業でワクチン接種をする場合であっても、接種するかどうかは「自己判断」です。接種を拒否した従業員に対して、解雇や懲戒処分を行う事は、「それを直接禁止する法律はないが、適切ではない。」というのが政府見解のようです。

拒否している従業員に無理やり接種させようとすると、パワハラの類型である「個の侵害」、あるいは「過大な要求」に該当する可能性があります。

また、拒否している従業員や、上記の接種不適当者や接種要注意者とわかっていて、企業で接種させ、重い副反応が出た場合は、労災認定という可能性も出てきます。

企業で接種を実施する場合でも、接種するかどうかは従業員個人の判断。また、接種不適当者や接種要注意者に該当する人がいたら、接種を見送るなどの慎重な判断が求められます。

平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金