今でもこのような言葉を聞くことがあります。意味は通用しますが、法律的には正しくありません。
現在、国が運営しているのは失業保険ではなく、雇用保険です。
雇用保険は、失業だけでなく、もっと広い場面でセーフティーネットになっているのです。
〇失業保険と雇用保険
失業保険法という法律は確かにありました。
失業した時に失業保険金を支給するのが主な目的です。
ただ、失業保険法は、1975年(昭和50年)4月1日に廃止になりました。
そのかわりにできたのが、雇用保険法です。
今から40年以上前に廃止になった法律でも、日常的に使われ、会話として成立しているのです。
雇用保険=失業した時 というイメージがいかに強うかという事を現しています。
〇雇用保険の主な給付
雇用保険法の目的をもとに、どのような時に給付が行われるかを見ていきます。
・失業した時
・雇用の継続が困難になった時(高年齢者、育児、介護)
・労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた時
・雇用の安定および労働者の能力開発のため(各種助成金)
失業という会社を辞めた時だけでなく、在職中の人についての給付も多くあります。
また、一番下の「雇用の安定および労働者の能力開発のため」は、企業が受ける助成金が主です。
コロナ禍で注目をあびた雇用調整助成金や、キャリアアップ助成金などがあります。
ちなみに、失業した時にもらう給付、多くの人は「基本手当」を受給します。
失業に関する給付はほかにもありますが、「失業」の名称のついた給付はありません。
しかし、失業した際に「私は、基本手当をもらっている。」と言っても、理解してもらえないかもしれません。
日常では、「失業給付」の方が通じやすいです。
〇雇用保険のこれから
雇用保険に加入するためには、その会社で1週間に20時間以上働く必要があります。(65歳以上の人は例外もあります)
この要件を満たさなければ、雇用保険には加入できず、上記の給付を受けることができません。
1週20時間未満の短時間勤務の人は、雇用保険のセーフティーネットから外れています。
政府は、1週間に20時間以上働く という要件を緩和する方向で検討に入りました。
1週20時間未満の短時間勤務の人も雇用保険に加入してもらう理由は、失業だけではありません。
政府の看板政策である、以下のことが関係していると思われます。
・子育て支援
・学びなおし(リスキング)
育児休業をすると、一般的には会社からの給与はありません。
ただ、雇用保険に加入していれば、「育児休業給付」が受給でき、休業前の賃金の一部が補償されます。
また、自ら職業に関する訓練(要件を満たした講座など)を受けた場合には、その費用の一部が給付される、教育訓練給付があります。
会社が計画的に行った教育訓練の費用の一部を支給する助成金もあります。
雇用保険に加入していれば、これらも対象になります。
看板政策を実現させるためには、雇用保険の適用拡大が必要なのでしょう。