ノーベル経済学賞 受賞者からの提言
今年のノーベル経済学賞は、男女の賃金格差の要因分析を行った、クラウディア・ゴールディンさんが受賞しました。

ゴールディンさんは受賞後の記者会見で、日本女性の労働参加率の増加には「驚き」と評価したしました。

一方で、労働時間の短さについても言及し、「女性を労働力にするだけでは十分ではない」と指摘されました。

〇ゴールティンさんの研究

ゴールティンさんは、アメリカの過去200年間の統計資料などから、女性の就業率の変化を突き止めました。

農業が支流だった頃は、女性の就業率は高かったのです。

しかし、次第に工業化が進むと、次第に低下。

自宅での勤務が難しくなると、仕事と家庭の困難になったのが理由でしょう。

世の中のサービス化が進むにつれ、再び女性の就業率は上昇していきます。

これをグラフに表すと、アルファベットの「U」のような形になる事を発見したのです。

〇M字カーブは消滅?

日本にも似た言葉で「M字カーブ」と言うものがあります。

女性の労働参加率は、20代後半から30代にかけて、労働参加率が低下し、40代以降に再び増加します。

これをグラフに表すと、アルファベットのMのようになることから、こう言われてきました。

(画像は男女共同参画局のホームページより)

ただ、近年は20代後半から30代にかけて、労働参加率はほとんど低下せず、谷が見えない事から、M字カーブは消滅したという意見もあります。

ゴールティンさんの「驚き」はここに出ているのでしょう。

〇日本女性の労働時間は短い

労働参加率は上がったのですが、労働時間はまだ男性に比べて少ないです。

OECD(経済協力開発機構)が2020年にまとめた国際比較データによると、日本女性の労働時間を1とすると、日本男性の労働時間は1.7になります。

これは比較国に比べて、格差が大きいです。

女性が1日5時間労働、男性が1日8.5時間労働というようなイメージです。

理由として挙げられるのは、日本女性はパート、アルバイトといった非正規での雇用が多い事です。

育児休業を取得するのはほとんど女性ですし、復帰後の短時間勤務もほとんど女性が取得しています。

「家事は女性中心」という意識がまだ日本には根付いているのでしょう。

職務遂行能力に男女の差はない。

しかし女性の方が労働時間が短かったり、賃金が少なかったりするのは、社会環境の要因が大きい。

それを解決すれば、もっと女性が活躍できることになる。

ノーベル経済学賞の受賞者から、そのような「提言」を受けた気がします。

平倉社労士 東京都文京区の社会保険労務士 就業規則、雇用安定助成金