その1つが定期健康診断です。
常時雇用し、週の所定労働時間が30時間以上の人に対して、少なくとも毎年1回の定期健康診断を実施しなくてはなりません。
(印刷業で有機溶剤を使う業務など、特定業務に従事する人は6か月に1回という決まりになっています)
毎年1回なので、何月にやってもよいのですが、年度初めの4月や下半期が始まる10月頃に実施する企業が多いようです。
実施するのはもちろんですが、その後の措置も重要なのです。
その中でも、今回は次のことについて解説していきます。
健康診断個人票の作成・保存
所見ありの人について、就業上の措置についての医師の意見
衛生委員会での審議
〇健康診断個人票の作成・保存
健康診断を実施した結果、本人にその結果を通知するのはもちろんのことです。全て企業でこれは実施している事でしょう。
そして、企業としても健康診断の結果を個人票にまとめ、5年間保存しなくてはなりません。
作成と言っても、健康診断を実施した機関からデータをもらうのが一般的です。
ところで、たまに「健康診断の結果は重要な個人情報なのだから、本人の同意なく会社が把握してよいのか」と聞かれることがあります。
定期健康診断の実施も結果の保存も、労働安全衛生法という法律で企業に義務付けられています。ですから、把握してよいですし、把握しなければならないのです。
ただし、重要な個人情報です(「要配慮個人情報」に分類されます)。取扱責任者や取扱いのできる従業員のしっかり決め、厳重な管理をする必要があります。
〇所見ありの人について、就業上の措置についての医師の意見
労働安全衛生法と労働安全衛生規則に、以下のことが書かれています。
「健康診断の結果、異常の所見があると診断された場合に、就業上の措置について医師の意見を聴き、それを健康診断個人票に記載すること」
異常の所見とは、ここがけでははっきりしていませんが、労働基準監督署の調査で「総合A判定以外の人」と言われた企業があるそうです。
就業上の措置として記載するのは、具体的には、以下の文言になるでしょう。
「通常勤務 「就業制限」 「要休業」
医師とは、産業医を選任している企業はその人になるでしょう。
いずれにせよ、健康診断結果を医師に見せ、意見を聴いて記載してもらう必要があります。
〇衛生委員会での審議
常時50人以上労働者を雇用している事業所では、産業医や衛生管理者、労働者代表から指名を受けている人などで構成する衛生委員会を設置しなくてはなりません。
その衛生委員会で審議すべき事項も労働安全衛生規則で定められていて、その中に以下の事項があります。
健康診断の結果に対する対策の樹立に関すること
したがって、自社の健康診断結果の傾向を見て、必要な対策等を立てる必要があります。
また、審議すべき事項として、以下の項目もあげられています。
労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること
長時間にわたる労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること
労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること
これらは健康診断やストレスチェックの結果とも関連する項目です。これらも考慮し、対策を立てることが必要でしょう。