うちのクライアントでも、2、3回ありました。
急に退職代行の会社から電話がかかってきてびっくりするかもしれませんが、世間的に見て、珍しい事ではありません。
御社が特別悪いわけではありません。相手の話を聞き、冷静に対応しましょう。
そこで今回は、退職代行会社について
1 退職代行会社とは
2 退職の拒否はできるのか
3 退職の具体的な手続き
の3点について解説していきます。
なお、本項はもYouTubeの平倉社労士チャンネルでも紹介しています。
〇退職代行会社とは
会社と退職したい従業員の間に入って、退職の交渉をする会社です。
最初は電話で「退職代行会社の××です。御社の○○さんが退職します」というような連絡が来ます。
電話がかかってきたら、相手の要望を聞きましょう。
ほとんどが、「円満に退職したい」です。
ただ、中には、「御社内でパワハラがあったせいで退職します。解決金○○円を要求します」というようなことを言ってくる場合があります。
事実かどうかを調べ、そのような事実がない場合は、もちろん要求に応じる必要がありません。
〇退職の拒否はできるのか
従業員が退職希望を出しているのに、会社が認めず、強引に勤務させることができるか?
原則できません。これは、退職代行会社が間に入るか入らないかに関係ありません。
いわゆる正社員は、会社と期間の定めのない雇用契約を締結しています。この場合、従業員には、退職の自由があります。
また、契約社員のように、期間の定めの有る雇用契約を締結している人は、「やむを得ない事情がある場合」に期間満了前でも退職できるとなっています。
やむを得ない事情が無ければ、期間満了前の退職は拒否できるという解釈になるのですが、無理やり働いてもらうのはそれは得策ではないでしょう。
ミスして会社に損害になるようなことをするかもしれません。社内に悪い噂を流すかもしれません。
希望通り、退職してもらう方がよいでしょう。
ちなみに、労働基準法の第5条に、強制労働の禁止を定めた条文があります。
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
退職届を提出した従業員を会議室に呼んで、暴力をふるって、退職をさせないようにしたり、「同業の会社に君を採用しないよう圧力をかけるから」 と脅かしたりするのは、もってのほかです。
この条文に違反すると、 「一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金」という、労働基準法の中で一番重い罰が規定されています。
退職を引き留めるのは許されますが、本人の意思を無視して、強引に退職させないようなことはしてはなりません。
ただ、退職代行会社と、退職日や引継ぎについて交渉することは可能です。
多くの退職代行会社の目的は、「依頼者に円満に退職してもらう」ことです。引継ぎの重要性は理解しています。
本人が出社するのか、あるいはメールや郵送でのやりとりになるのか、何日以内に終わらせるのかなど、話し合いはできます。
〇退職の手続き
これは、通常の退職の人の手続きと同じです。いつものように、しっかりと進めていきましょう。
会社からは、以下のことをお願いします
・退職届の提出(または退職合意書)
・退職時の誓約書の提出
・社員証、携帯電話など、貸与している物の返却
・退職者の私物の引き取り
1つ問題なのが、私物の引き取りです。
本来なら、本人が会社に取りに来て、確認して、全て持って帰るものです。
ただ、退職代行会社を使って退職したのですから、会社には来づらいかもしりません。
郵送すると、「梱包の仕方が悪いから傷がついた」、「壊れた」、「あれが入っていない」というトラブルが起こるかもしれません。
郵送にするか、会社の近くまで来てもらい、渡してその場で確認してもらうか そこも話し合いで決めましょう。
退職代行会社からは、本人に渡す書類として以下のものを要求されるでしょう。全部ではないかもしれませんが、予想されるのはこの通りです。
雇用保険の離職票
健康保険 厚生年金保険 資格喪失証明書
源泉徴収票
退職証明書
人事・総務の担当者なら見慣れている書類です。ただ、退職証明書は注意が必要です
これは、「この人は、こういう状況で退職しました。」ということを会社が証明するですが、労働基準法で記載項目について定められています。
・使用期間
・業務の種類
・事業における地位
・賃金
・退職の理由
使用期間は、移籍していた期間です。(入社日から退職日まで)
業務の種類、事業における地位、賃金の3項目は、退職時点のものでよいです。
そして、5つの記載項目のうち退職した人が記載してほしい内容を決める ということになっています。会社側は本人が指定していない項目については書いてはいけません。
多くの場合、退職証明書の項目まで指定してきません。なので、退職証明書を要求されたら、記載項目まで確認してください。
以上解説してきましたが、退職代行会社から連絡が来ても、冷静に対応することが大切です。