本件は既に、民間企業の「労災」にあたる公務災害の認定がされています。
本件を教訓に、長時間労働による健康障害を防止することを考えていきます。
〇「自主裁量」の限界
本件で長時間労働になった大きな原因が、部活動の顧問業務があげられています。
市側は、部活動が「自由裁量によって行われた」と主張しました。
裁判では「顧問業務が全くの自主活動の範囲に属するものでせあったとは言えない」とし、この主張を退けています。
民間企業でも、仕事なのか自主的活動なのか、微妙なものはあります。
使用者としては、「タイムカードが押されていないから労働時間ではない。」と安易に決めつけるのではなく、「労働時間に該当するのに、カウントされていない時間はないか。」と確認をしていく必要があるのです。
〇休日、休憩も大切
発症1か月前の時間外勤務時間は119時間、2か月前は135時間、3か月前は96時間と、「過労死ライン」と言われる月間80時間を超えています。
直近の2か月では100時間も超えています。
危険な状態だったことがわかります。
そして、発症直前の53日間で休日は1日しかありませんでした。これでは体も心も休まらないでしょう。
本件ではわかりませんが、最近休憩の重要性も言われています。
労働時間の途中にしっかり休憩を取り、必要な食事をとる事は、大切な事なのです。
休憩が取れないことが、従業員のモチベーションを下げるという話も聞きます。
〇周りの人の助言も必要
本件の中で「校長は部活動に関する実績指導などから、男性(教諭)が健康を損ねる恐れがあることを客観的に認識できた。」とも述べられています。
本人は責任感から長時間労働をしてしまうケースはあります。
心が正常でないと、とにかく目の前の仕事をすることしか考えられず、無理に無理を重ねてしまうケースもあります。
そうならないために、上司や周りの同僚が休むよう助言したら、仕事の割り振りを変更することも必要です。
そして、このような事が言い合える環境づくりも大切です。